第101章 マウス・キャプチャー


マウスカーソルが自分のウィンドウ内にあるときは、マウス関連 メッセージを受け取ることができました。しかし、ウィンドウ外に 出ると自分のところにはメッセージは来ません。プログラムによっては ウィンドウの外に出てもメッセージがほしい場合があります。 これを実現するのがマウス・キャプチャーという技(?)です。 でも、よく考えてみると誰かのプログラムがキャプチャーしていると 他人のプログラムに迷惑をかけることもあります。さらに、 自分自身は非表示にしておいてずっとキャプチャーを続けていると ユーザーはマウスが効かなくなってしまったと思いこむかもしれません。 そこで、このようなことが起こらないようにいろいろ制約がついています。 特に、32ビット版では制約が厳しくなりました。

HWND SetCapture( HWND hWnd );

これでマウスキャプチャできます。この関数を実行すると マウスメッセージはhWndで指定したウィンドウに届きます。 しかし、これはボタンが押されているときのみ有効です。 ボタンを離した状態でウィンドウの外に出るともう、自分のところには メッセージは来ません。ボタンを離した状態で外に出て そこでボタンを押してもだめです。従って自分のクライアント領域内 でボタンを押して、そのままドラッグして外に出るということになります。

BOOL ReleaseCapture(VOID);

これで、マウスキャプチャをやめます。

マウスをクライアント領域で左クリックしてそのままドラッグすると マウスの位置を刻々と表示するプログラムです。座標はクライアント 座標ですから左の図のようにXもYもマイナスになるのはマウスが クライアント領域をはずれて左上の方に行ってしまったことを意味しています。

// mcap01.rcの一部です。 ////////////////////////////////////////////////////////////// // // Menu // MYMENU MENU DISCARDABLE BEGIN POPUP "ファイル(&F)" BEGIN MENUITEM "終了(&X)", IDM_END END END

単なるメニューリソースです。

// mcap01.cpp #define STRICT #include <windows.h> #include "resource.h" LRESULT CALLBACK WndProc(HWND, UINT, WPARAM, LPARAM); BOOL InitApp(HINSTANCE); BOOL InitInstance(HINSTANCE, int); void ShowPoint(HWND, POINTS); char szClassName[] = "mcap01"; //ウィンドウクラス BOOL bCap = FALSE; int WINAPI WinMain(HINSTANCE hCurInst, HINSTANCE hPrevInst, LPSTR lpsCmdLine, int nCmdShow) { MSG msg; if (!InitApp(hCurInst)) return FALSE; if (!InitInstance(hCurInst, nCmdShow)) return FALSE; while (GetMessage(&msg, NULL, 0, 0)) { TranslateMessage(&msg); DispatchMessage(&msg); } return msg.wParam; }

いつもと同じです。

//ウィンドウ・クラスの登録 BOOL InitApp(HINSTANCE hInst) { WNDCLASSEX wc; wc.cbSize = sizeof(WNDCLASSEX); wc.style = CS_HREDRAW | CS_VREDRAW; wc.lpfnWndProc = WndProc; //プロシージャ名 wc.cbClsExtra = 0; wc.cbWndExtra = 0; wc.hInstance = hInst; //インスタンス wc.hIcon = LoadIcon(NULL, IDI_APPLICATION); wc.hCursor = NULL; wc.hbrBackground = (HBRUSH)GetStockObject(WHITE_BRUSH); wc.lpszMenuName = "MYMENU"; //メニュー名 wc.lpszClassName = (LPCSTR)szClassName; wc.hIconSm = LoadIcon(NULL, IDI_APPLICATION); return (RegisterClassEx(&wc)); }

ここも相変わらず同じです。メニュー名を忘れないでください。

//ウィンドウの生成 BOOL InitInstance(HINSTANCE hInst, int nCmdShow) { HWND hWnd; hWnd = CreateWindow(szClassName, "猫でもわかるマウスキャプチャー",//タイトルバーにこの名前が表示されます WS_OVERLAPPEDWINDOW, //ウィンドウの種類 CW_USEDEFAULT, //X座標 CW_USEDEFAULT, //Y座標 CW_USEDEFAULT, //幅 CW_USEDEFAULT, //高さ NULL,//親ウィンドウのハンドル、親を作るときはNULL NULL,//メニューハンドル、クラスメニューを使うときはNULL hInst,//インスタンスハンドル NULL); if (!hWnd) return FALSE; ShowWindow(hWnd, nCmdShow); UpdateWindow(hWnd); return TRUE; }

ここも同じですね。

//ウィンドウプロシージャ LRESULT CALLBACK WndProc(HWND hWnd, UINT msg, WPARAM wp, LPARAM lp) { int id; POINTS pts; switch (msg) { case WM_COMMAND: switch(LOWORD(wp)) { case IDM_END: SendMessage(hWnd, WM_CLOSE, 0, 0L); break; } break; case WM_LBUTTONDOWN: bCap = TRUE; SetCapture(hWnd); pts = MAKEPOINTS(lp); ShowPoint(hWnd, pts); break; case WM_MOUSEMOVE: if (bCap) { SetCursor(LoadCursor(NULL, IDC_CROSS)); pts = MAKEPOINTS(lp); ShowPoint(hWnd, pts); } else SetCursor(LoadCursor(NULL, IDC_ARROW)); break; case WM_LBUTTONUP: SetCursor(LoadCursor(NULL, IDC_ARROW)); ReleaseCapture(); bCap = FALSE; break; case WM_CREATE: SetCursor(LoadCursor(NULL, IDC_ARROW)); break; case WM_CLOSE: id = MessageBox(hWnd, (LPCSTR)"終了してもよいですか", (LPCSTR)"終了確認", MB_YESNO | MB_ICONQUESTION); if (id == IDYES) { DestroyWindow(hWnd); } break; case WM_DESTROY: PostQuitMessage(0); break; default: return (DefWindowProc(hWnd, msg, wp, lp)); } return 0L; }

左ボタンが押されたら(WM_LBUTTONDOWN)、bCapをTRUEにします。 この変数は後で使います。そして、キャプチャーの開始です。 自作関数ShowPoint関数を呼んでマウスの位置を描画させます。

マウスが動いたとき(WM_MOUSEMOVE)、bCapがTRUEならばマウスカーソルを 十字に変えてマウス位置を表示させます。FALSEの時は マウスカーソルを通常のものにします。

マウスボタンが離されたとき(WM_LBUTTONUP)、カーソルを 通常のものに戻してキャプチャー状態を解放します。 また、bCapをFALSEにします。

void ShowPoint(HWND hWnd, POINTS pt) { char str[256]; char *sp = " "; HDC hdc; wsprintf(str, "x = %3d, y = %3d", pt.x, pt.y); hdc = GetDC(hWnd); TextOut(hdc, 20, 20, sp, strlen(sp)); TextOut(hdc, 20, 20, str, strlen(str)); ReleaseDC(hWnd, hdc); return; }

マウス位置の座標を描画させる関数です。

どうしてspという空白の文字列を 描画するの?

はい。これを省略するとどうなるかは 実験すればすぐにわかります。

今回は、簡単でした。


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Update Jan/21/1998 By Y.Kumei
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